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建築の学校を卒業後、設計事務所に勤めて、設計図を書く業務に関わっていたのですが、上司が現場打合せから建設会社側で作図した図面を持ち帰ってくることに、自分たちの書いた設計図があるのに何故あらためて図面を起こすのかよく理解できなかったことを思い出します。
確かに設計図には建物を作るための情報が全て詰っているのですが、建設してゆく側からしたら設計図のあちこちを見ながら作業進めるのでは非常に効率が悪い事、他なりかねません施工図とは簡単に説明すると、建物を建設するにあたり、建設に関わる多くの業種の人達に効率よく建物を作るための情報を伝えるための、設計図を補助する様な存在と言えるのではないでしょうか。
施工図の代表的なものとしてはコンクリート躯体図、平面詳細図、天井伏図、タイル割付図など、他、設備器具との重ね合わせ図である総合図 なども含まれます。
建物が小規模でれば事務所に持ち帰り、作図データをやりとりする程度で対応可能ですが、ある程度の規模の建物(中、高層ビルなど)では施工図専門の部署を現場内に設け、現場常駐体勢で対応することがほとんどです。
又、現場常駐の場合は作図作業はもちろんの事、工事関連業者との打ち合わせ専門業者の製作図チェック、作図工程の管理なども対応範囲となります。
設計事務所に勤務していたときは新米であることもあり、基本設計から実施設計が終わるとすぐ次の案件という感じで、自分で書いた建物もパースで見るくらいで現場とのつながりが希薄な状態でした。
その後、とある事情で施工図に関わる立場となりましたが、一番に変わったと感じたことは、建設現場の空気がリアルに感じられる様になったと共に、自分の作図したものに対する責任の重さを痛感することとなりました。失敗は即現場に影響し、叱られることもたびたびでした。
その一方で、今までは関わることが出来なかった、メジャーでだれでも知っている様な建物に仕事上関与できるチャンスも次第に増えてゆきました。それが華々しい部門担当で無いにしても、工事の過程で関わった、多くの人達と竣工を迎える事に非常に感激するとともに、大きな達成感を得ることが出来ました。
その他、施工図担当と言う立場上、同業者、現場監督、設計者、施主、各メーカー方々、等幅広い人脈に接する機会が増えたと言う事も施工図担当としてのメリットの1つと考えられるのではないでしょうか。
近頃は、実務の場面でも頻繁にBIMについて話題となったり、実際に対応の有無の問い合わせを受ける機会が多くなり、建築業界にもやっと浸透してきた感がある今日この頃です。
BIMに関するソフトメーカーや対応業者のサイトをのぞくとBIMに関する情報が溢れんばかりですが、まだぱっと見た感じでは、従来の三次元CADの様な印象を受けると思われます。しかし実際は似て非なるものです。
BIMとは、建物情報を視覚的に三次元で表現出来ることはもちろんですが、建物の各部材に種々な情報(属性)を与えることで、膨大な設計情報を検索しやすくすると言った面や、部材をオブジェクトとして構成することで共通部材については一括で管理、たとえば一括変更や数量集計などが容易に出来るといったデータベース的な用途の方が、ウエイトが高い技術と個人的には思っています。
又、メリットがある一方、作図に関してある程度の厳密なルール付けが必要な事や、現実的には、建設に関する情報が全て三次元で管理しきれていない関係上、二次元データとの連携が課題とされています。
それでも近年は建設BIMとして捉えた場合、関連業種の3次元データを合体することで、早い段階で部材の干渉チェックが可能となり無駄なコスト削減への効果や施工手順が明瞭化される事により視覚的に利用されるなどと言った利用の実例も増えてきています。
建築学部を卒業したばかりの状況では、建築業界もよくわからない状況で設計は設計事務所、建設はゼネコンぐらいの捉え方と思われますが、実際はもっと分業化的な業種も混在しており、もしかしたらそこに自分に最適な位置やチャンスもあるかも知れないと考えられないでしょうか?
たとえば、施工図と同様、巨大な建物を設計する場合も多くの人材が必要とされます。
設計に関わる全ての人がデザイナーである訳ではなく、当然作図に専念するひとも多数必要とされる場合もかなりあるのです。デザイナー希望でも、実は作図の方が好きな方々も意外といらっしゃるのでは!
取締役 千葉和久